アヤワスカ茶の生化学

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精神展開薬(psychedelics)を含む薬草は世界各地で伝統的に使用されてきたが、二種類の植物を組み合わせて茶をつくるという点で、アヤワスカ茶は独特である。

アヤワスカ茶 ayahuasca は、アマゾン川上流域の先住民社会で儀礼的に使用されてきた薬草茶である(→「アマゾン先住民シピボのシャーマニズム」)。アンデス先住民のケチュア語で「aya」は、「死」あるいは「霊」という意味であり、「huasca」は、熱帯雨林で大樹に絡みつく蔓植物のことである。

日本語ではカタカナ表記だが、中国語では「死藤」と訳される。この「死」は、臨死体験のような神秘体験を引き起こすという意味であり、飲むと死ぬ毒物という意味ではない。「霊」の語をとって「霊籐」とすれば、服用すれば不老不死の仙人になれそうなイメージになる。

アヤワスカとは薬草茶の名前であるが、やはりケチュア語アヤワスカ(ayahuasca)(Banisteriopsis caapi)という蔓植物の幹と、チャクルーナ(chacruna)(Psychotria viridis) という植物の葉を煮込んで作られる。植物としてのアヤワスカと区別する場合には、茶のほうをアヤワスカ茶という。

DMT(N,N-ジメチルトリプタミン)

チャクルーナに含まれるN,N-ジメチルトリプタミン(DMT: N,N-dimethyltryptamine)は精神展開薬(サイケデリックス)の一種である。

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ジメチルトリプタミン(DMT)の構造式

DMTはオジギソウ属のミモザMimosa tenuifloraから発見されたが、クサヨシPhalaris spp.)やアカシアAcacia spp.)など、多くの植物に含まれており、捕食者である昆虫を忌避する機能を持っていると推測されている。

内因性DMT

DMTが、他の向精神薬と違って特殊なのは、DMTは、同じ物質がヒトを含む動物の体内にも存在し、おそらくは神経伝達物質としても機能していることである。

DMTはセロトニン(5-HT)と構造がよく似た分子であり、5-HT2Aレセプターのアゴニストとして作用する。構造が類似する5-メトキシ-N,N-ジメチルトリプタミン (5-MeO-DMT) と区別するときには、N,N-ジメチルトリプタミン(N,N-DMT: N,N-dimethyltryptamine)とも表記する。

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セロトニン(5-HT)の構造式

臨死体験は、精神展開薬、とくにDMTによる体験(モノアミン仮説)と、ケタミングルタミン酸仮説)によるの体験の両方の要素が含まれている[*2]

DMTはシグマ-1受容体(σ-1 receptor)の内因性アゴニストだとされている。臨死状態で低酸素状態になった場合、神経を保護するために放出されるDMTが精神展開作用を引き起こしているという研究が行われている[*3]

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DMTはシグマ-1(σ-1)受容体のアゴニストとして作用する[*4]

モノアミン酸化酵素阻害薬(MAOI)

DMTは経口で摂取すると消化液中のモノアミン酸化酵素阻害薬(MAOI: MonoAmine Oxidase Inhibitor)によって分解されてしまうので、オリノコ川流域の先住民族では喫煙が一般的である。

アヤワスカには、ハルミンハルマリンなどのMAOIが含まれており、チャクルーナと合わせてアヤワスカ茶にすることで、経口摂取してもDMTが消化されるのを阻害する。

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ハルミン
 
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ハルマリン

ハルミン、ハルマリンの名は、中近東に分布するハマビシ科の植物、ハルマラ(Peganum harmala)(シリアン・ルー)に由来する。

モノアミン酸化酵素(MAO)には、セロトニン、アドレナリン、ノルアドレナリンなどを分解するMAO-Aと、おもにドーパミンを分解するMAO-Bの、2種類のサブタイプがある。

非選択的MAO阻害薬としては抗うつ薬として用いられてきたイプロニアジド(Iproniazid)があるが、三環系抗うつ薬(TCA)が開発された後、あまり使用されなくなった。しかし、イプロニアジドなどのMAO阻害薬が特異的に奏効するうつ病を「非定型うつ病」として、三環系抗うつ薬が奏効する「定型うつ病」とは別の疾患とする説もある[*5]

セロトニンと構造が類似しているDMTの分解を阻害するハルミン、ハルマリンは、MAO-A阻害薬である。MAO阻害薬にも、非可逆的な阻害薬と可逆的な阻害薬があるが、ハルミン、ハルマリンは、いずれも可逆性モノアミン酸化酵素A阻害薬(RIMA)である。人工的に合成されたものとしてはモクロベミド(moclobemide)があり、うつ病の薬として、オーロリクスという商品名で流通しているが、日本では承認されていない。

また、MAO-B阻害薬はドーパミンの分解を阻害する。ドーパミンの不足を補い、パーキンソン病の治療に使用されるセレリギンは非可逆的MAO-B阻害薬である。非可逆的であるため、セレリギンを中止してから約14日間は、SSRIなどの抗うつ薬、その他、モノアミン系の物質の作用を増強してしまうため、併用禁忌であることが多い。

アヤワスカの医薬品としての可能性

ブラジルでは、アヤワスカを長期にわたって連用しても害がないのかという研究が続けられているが、むしろ精神的には健康になるという結果が得られている[*6][*7][*8][*9]

また、治療抵抗性うつ病に対して著効を示すという研究もある[*10]。DMTと同じ精神展開薬であるシロシビンやケタミンでも同様の効果が認められている。

補遺:DMTを含有する植物

学名 通称 部位 濃度(%)
Fabaceae マメ科
Acacia confusa ソウシジュ 0.02[*11]
Acacia longifolia (全体) 0.2[*12]
Acacia oerfota -0.1[*13]
Acacia phlebophylla 0.3[*14]
Acacia podalyriaefolia 樹皮 0.5-2.0[*15]
Acacia polyacantha -0.2[*16]
Acacia senegal アラビアゴムノキ -0.1[*17]
Acacia simplex 樹皮 0.81[*18]
Acacia verek -0.1[*19]
Lespedeza bicolor ヤマハギ -0.25[*20]
Anadenanthera colubrina 種子 0.06[*21]
Desmanthus illinoensis ハイクサネム 0.20[*22]
Desmodium caudatum ミソナオシ 0.087[*23]
Mimosa tenuiflora オジギソウ 樹皮・根 1.0[*24]
Malpigiaceae キントラノオ
Diplopterys cabrerana チャクロパンガ 0.17-1.74[*25]
Myristicaceae ニクズク科
Virola calophylla ヴィローラ 0.15[*26]
Poaceae イネ科
Arundo donax ダンチク 0.006[*27]
Phalaris aquatica オニクサヨシ 0.10[*28]
Rubiaceae アカネ科
Psychotria carthagenensis アミルカ 0.2[*29]
Psychotria viridis チャクルーナ (全体) 0.10-0.61[*30]
Rutaceae ミカン科
Vepris ampody 葉・枝 0.2-[*31]



記述の自己評価 ★★★☆☆
(一般的に知られている知識を列挙しただけで、独自の考察はない。内因性DMTや非定型うつ病など、異なるテーマについての記事が混じっており、整理する必要がある。断りのないリンクはwikipediaへのリンクである。日本語よりも英語のほうが情報量が多い。)
CE2016/06/19 JST 作成
CE2020/12/18 JST 最終更新
蛭川立

*1:免責事項にかんしては「Wikipedia:医療に関する免責事項」に準じています。

*2:Charlotte Martial, Héléna Cassol, Vanessa Charland-Verville, Carla Pallavicini, Camila Sanz, Federico Zamberlan, Rocío Martínez Vivot, Fire Erowid, Earth Erowid, Steven Laureys, Bruce Greyson and Enzo Tagliazucchi (2019). Neurochemical models of near-death experiences: A large-scale study based on the semantic similarity of written reports. Consciousness and Cognition, 69, 52-69.

*3:Attila Szabo, Attila Kovacs, Jordi Riba, Srdjan Djurovic, Eva Rajnavolgyi and Ede Frecska (2016). The Endogenous Hallucinogen and Trace Amine N,N-Dimethyltryptamine (DMT) Displays Potent Protective Effects against Hypoxia via Sigma-1 Receptor Activation in Human Primary iPSC-Derived Cortical Neurons and Microglia-Like Immune Cells. Frontiers in Neuroscience, 10, 423.

*4:Tsung-Ping Su, Teruo Hayashi, and D. Bruce Vaupel (2009). When the Endogenous Hallucinogenic Trace Amine N,N-Dimethyltryptamine Meets the Sigma-1 Receptor. Science Signaling, 2, 12.

*5:日本語で書かれた総説としては、大前晋(虎の門病院精神科)(2010).「非定型うつ病という概念」『精神神経医学雑誌』112, 3-22. がある。

*6:Personality, Psychopathology, Life Attitudes and Neuropsychological Performance among Ritual Users of Ayahuasca: A Longitudinal Study

*7:アヤワスカ関連論文日本語訳②:アヤワスカはスマートドラッグなのか?|未決定|noteに、日本語による論文の概要がある。

*8:https://www.researchgate.net/publication/271648194_Long-term_use_of_psychedelic_drugs_is_associated_with_differences_in_brain_structure_and_personality_in_humans

*9:アヤワスカ関連論文日本語訳:アヤワスカを使用し続けるとどうなるの?|未決定|noteに、日本語による論文の概要がある。

*10:Rapid antidepressant effects of the psychedelic ayahuasca in treatment-resistant depression: a randomized placebo-controlled trial

*11:Psychedelic plants - wikidoc(孫引き)

*12:Psychedelic plants - wikidoc(孫引き)

*13:Psychedelic plants - wikidoc(孫引き)

*14:Psychedelic plants - wikidoc(孫引き)

*15:Psychedelic plants - wikidoc(孫引き)

*16:Psychedelic plants - wikidoc(孫引き)

*17:Psychedelic plants - wikidoc(孫引き)

*18:Psychedelic plants - wikidoc(孫引き)

*19:Psychedelic plants - wikidoc(孫引き)

*20:lespedeza bicolor - Other Psychoactives - Welcome to the DMT-Nexus(孫引き)

*21:Psychedelic plants - wikidoc(孫引き)

*22:Psychedelic plants - wikidoc(孫引き)

*23:Psychedelic plants - wikidoc(孫引き)

*24:Psychedelic plants - wikidoc(孫引き)

*25:Psychedelic plants - wikidoc(孫引き)

*26:Psychedelic plants - wikidoc(孫引き)

*27:Psychedelic plants - wikidoc(孫引き)

*28:Psychedelic plants - wikidoc(孫引き)

*29:Psychedelic plants - wikidoc(孫引き)

*30:Psychedelic plants - wikidoc(孫引き)

*31:Psychedelic plants - wikidoc(孫引き)