ヒトの加齢・性周期による配偶行動

女性の性周期

メスの性行動はテストステロンの影響を受ける。ヒト以外の動物では、排卵のすこし前にテストステロンの分泌が高まり、交尾行動を促すことが多い。


ニワトリの排卵前後におけるテストステロン、黄体刺激ホルモン、プロゲステロンの分泌量[*1]LHサージの前にテストステロン分泌量のピークがある。

人間の女性の場合は、月経の周期を通じて男性への関心が続くが、とくに排卵期と月経前に高まる[*2]排卵期に性衝動が高まるのは、受精の確率が高くなるからであろうが、月経前については、機能論的(進化論的)な説明が難しい。

女性の加齢

女性の性的関心がより直接的になるのは、三十代から四十代にかけてだと言われるが、心理社会的な要因が大きく、俗説の域を出ないのも事実である。


エストラジオールとテストステロンの分泌量の年齢による変化[*3]

生理的には、分泌されるエストラジオールの量が減少するのに伴い、テストステロンの相対的割合が高くなるという因果論的(生理学的)解釈が可能であると同時に、女性が妊娠しにくい年齢になるほど、性行動が活発になるという機能論的(進化論的)解釈も可能である。

「おばあさん仮説」

いっぽうで、人間の場合、閉経によって妊娠・出産ができなくなる時期が50歳前後と、自然寿命に比べて早すぎるのも事実である。これについては、ある程度以上の年齢になると、自分の子よりも孫を育てるほうに投資するほうが進化的に有利だという「おばあさん仮説 grandmother hypothesis」が唱えられている[*4]

男性の加齢

男性の場合、テストステロンのピークは十代の後半にあるが、加齢による低下はゆっくりであり、また個人差も大きい。人間の配偶システムが、やや一夫多妻的な傾向を持っていることと併せて考えると、男性にとっては「おじいさん」として孫の世話をするよりは、生殖可能年齢にある別の女性との間に子をもうけるほうが、より適応的なのかもしれない。



記述の自己評価 ★★☆☆☆
2019/01/30 JST 作成
2019/05/17 JST 更新
蛭川立

*1:Husvéth, F. (2011). Physiological and reproductional aspects of animal production. Digitális Tankönyvtár.

*2:コミサリュック, B. R., フローレス, C. B., ウィップル, B. 福井 昌子(訳)(2014).『オルガスムの科学―性的快楽と身体・脳の神秘と謎―』作品社, 206.(孫引き)(Komisaruk, B. R., Flores, C. B., Whipple, B. (2006). The Science of Orgasm. Johns Hopkins University Press.)

オルガスムの科学――性的快楽と身体・脳の神秘と謎

オルガスムの科学――性的快楽と身体・脳の神秘と謎

*3:日経ヘルス編集部 (2011). 『日経Health 2011年 10月号』日経BP社.(Menopause Management 2004年8月号, 12-17より改変。)

日経 Health (ヘルス) 2011年 10月号 [雑誌]

日経 Health (ヘルス) 2011年 10月号 [雑誌]

*4:Williams, G. C. (1957). Pleiotropy, natural selection, and the evolution of senescence. Evolution, 11, 398–411.