【資料】レヴィ=ストロース『今日のトーテミスム』

ラドクリフ=ブラウンの証明は、トーテミスムの反対者も擁護者も、ともに閉じこめられていたジレンマを決定的に取り除く。かれらは生物種に自然の刺戟物か、あるいは勝手な口実というただ二つの役割しか与えていなかったのだから……。トーテミスムの動物たちは、もっぱら、あるいはことさらに、恐怖、驚嘆、ないしは懇望の対象であることをやめる。観察の所与から出発して思弁的思惟が築いた概念や関係が、これら動物の感覚的現実の奥に透けて見えてくる。とうとう、人人は、自然種は《食べるに適している(bon à manger)》からではなく、《考えるに適している(bon à penser)》から選出されるのだと理解する。
 
レヴィ=ストロース『今日のトーテミズム』[*1]

2019/05/22 JST 作成
2020/05/18 JST 最終更新
蛭川立

*1:レヴィ=ストロース, C. 仲沢紀雄(訳)(2000).『今日のトーテミスム』みすず書房, 145. (L´evi‐Strauss, C. (1962). Le Totémisme aujourd'hui. Presses universitaires de France. )