夢見の系統発生
レム睡眠の進化は、鳥類と哺乳類の系統で独立に起こった。
哺乳類は、哺乳類型爬虫類(単弓類)から進化してきた。卵生の単孔類(原獣類)から分岐した、有袋類(後獣類)と有胎盤類(真獣類)の共通祖先でレム睡眠が進化したと考えられる。
いっぽう、鳥類は、恐竜から分岐したグループで、この系統でも、レム睡眠は独立に進化した。
夢見の個体発生
なぜレム睡眠があるのか、なぜ夢を見るのか、その機能はまだ完全には明らかになっていないが、夢が記憶の整理に役立っていることは事実である。
ヒトのレム睡眠の発達をみると、胎児期には睡眠のすべてがレム睡眠であり、加齢とともに減っていき、20歳ぐらいでほぼ1〜2時間になる。
夢は、大人として生きていくために必要な情報を学習していくために役立っている。
大人になると単純なことを記憶する能力は低下するが、今まで学習してきたことを整理して処理する能力(結晶的知能)が発達する。
睡眠と食性
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哺乳類の睡眠時間[*5]
同じ哺乳類でも、種によって睡眠時間はかなり異なる。
一般に草食動物よりも肉食動物のほうが脳が発達しており、長い睡眠時間を必要とする。
コアラはユーカリの木に抱きついたまま、ユーカリの葉を食べるとき以外はずっと寝ている(オーストラリア・ブリスベン・ローン・パイン・コアラ動物園[*6])
しかし、コアラやナマケモノは、草食動物でありながら、別方向に進化してきた。食べるとき以外はずっと寝ているという、消費するエネルギーと摂取するエネルギーを最小限におさえるという最適化である。繁殖期だけは積極的に行動する。そうしないと、遺伝子が残せず、絶滅してしまうが、コアラのオスにとっては繁殖は非常なストレスらしい。
記述の自己評価 ★★★☆☆
(既存の研究の大まかなレビュー。)
CE2018/05/06 JST 作成
CE2020/10/17 JST 最終更新
蛭川立
*1:J. Allan Hobson (2009). REM sleep and dreaming: towards a theory of protoconsciousness. Nature Reviews Neuroscience, 10, 803–813.
*2:J. Allan Hobson (2009). REM sleep and dreaming: towards a theory of protoconsciousness. Nature Reviews Neuroscience, 10, 803–813.
*3:加賀照虎 (2020).「知れば楽に!赤ちゃんの睡眠3つの特徴、5つのQ&A」『快眠タイムズ』(2021/10/01 JST 最終閲覧)
*4:神山潤「子どもの発達と脳の不思議2 眠りが育てる子どもの脳と体と心」『babycom ecology』(2021/10/01 JST 最終閲覧)
*5:朝日新聞デジタル (2018).「コアラは22時間、動物の睡眠時間はどれくらい?」(2021/10/01 JST 最終閲覧)
*6:Lone Pine Koala Sanctuary
コアラを抱っこして記念写真を撮るのが定番だが、じっさいには寝ているコアラを起こすと怒ってのろのろと暴れる。抱っこしてもまた眠ってしまうので、目を開けている写真を撮るのは難しい。