日照・自殺・殺人

自殺率の地域的な偏り


自殺率の国別統計(2016年)[*1]

自殺率は国や地域によって大きく異なる。自殺の理由もさまざまであるが、社会、経済的な問題が背景にあったとしても、ストレスに対する脆弱性には個人差もあり、うつ病という病気による病死という客観的な観点からとらえることも重要である。


単極性うつ病の国別統計(2016年)[*2]

しかし、うつ病罹患率の国別統計をみても、自殺率との間には関係がなさそうにみえる。精神疾患は問診によって診断される部分が大きく、国によって診断基準の程度に強弱があり、客観的な比較が難しいのは事実である。たとえば、アメリカのような、ポジティブな思考が強く求められる社会でこそ、逆に、うつ病という病気だとみなされてしまう人たちが多くなってしまうのかもしれない。

それに対して、自殺者の数は、ある意味で客観的な数字であり、そのほうがうつ病罹患率を正確に反映しているともいえる。

自殺率と日照時間

あらためて自殺率の世界地図をみると、中近東の砂漠地帯では自殺率が低く、ロシアでは自殺率が高いなど、自殺率は日照時間と関係がありそうにみえる。


年間日照時間の分布[*3]

じっさい、うつ病は「冬眠病」のようなもので、日照時間が減ると発病しやすい、ということはすでに知られている。


日照時間と自殺率の国別散布図[*4]

自殺率と日照時間をプロットしてみると、なるほど弱い負の相関が見いだせる。ただ、日本、韓国、中国などが高い方向に外れ値となっているのは、セロトニントランスポーター遺伝子の、不安・うつ傾向の突然変異を多く持っているからかもしれない。

自殺率が高い地域のひとつである、日本の国内ではどうだろうか。

日本における日照時間

都道府県に分けない分布[*5]
 

都道府県庁所在地の日照時間[*6]

やはり、自殺率と日照時間の間には負の相関がある。

自殺と殺人

自殺率はまた、殺人率と反比例する。世界的にみると、殺人率の高い国(ラテンアメリカなど)と自殺率の高い国(旧ソ連など)に二極分解している。日本は後者である。


自殺率と殺人率を国別にプロットしたもの[*7]

都道府県別の統計でみると、日本国内でも殺人率と自殺率にはばらつきがあり、かつ負の相関がある。

自殺率は最高の秋田県(26.8)と、最低の大阪府(14.7)[*8]、殺人事件認知率は最高の高知県(15.7)と最低の秋田県(1.84)[*9]、さらに刑法犯認知件数は、最高の大阪府(17510)と最低の秋田県(4080)[*10]となっている。

自殺率が最高なのも、殺人率・刑法犯認知件数が最低なのも秋田県である。東北地方の日本海側に偏りの極があるのは、おそらく冬季の曇天に起因する日照時間の不足とうつ病が関係しているからだろう。自殺率の統計は自殺が起こった場所で集計されているのだが、もっとも日照時間が長い山梨県で自殺が多いのは、希死念慮を抱いた人々が青木ヶ原のような「名所」に集まってくることにも理由がある。

自殺が少なく犯罪が多い県については、対極の秋田県ほどはっきりはしないが、日本の中でも大阪が特異な文化を持っているのは確かであろう。大阪や高知などで刑法犯や殺人事件が多いのは、暴力団の活動などの文化的な背景があるのかもしれない[*11]

人間が持っている攻撃性は一定であり、それが他者に向かうのか、自己に向かうのかという違いだけがあるのかもしれない。そして、その配分は日照時間に影響されるのだろうか。



記述の自己評価] ★★☆☆☆
(論旨はそれなりに明快だが、根拠となる議論は不十分で、引用されている資料にもばらつきがある。)
2016/11/26 JST 作成
2019/05/30 最終更新
蛭川立

*1:World Health Organization. (2018). Suicide data.(2019/05/14 JST 最終閲覧)

*2:Ritche, H. and Roser, M. (2018). Mental health. Our World in Data.(2019/05/14 JST 最終閲覧)(このサイトでは1990年以降の主要な精神疾患の推移をインタラクティブに見ることができるが、うつ病の地図だけはページ上にうまく表示されない。)

*3:Sunshine duration in Wikipedia.(2019/05/14 JST 最終閲覧)

*4:Satoru (2013). 「天気と自殺の関係について考えたこと」『バークレーと私』(2019/05/14 JST 最終閲覧)

*5:藤本健 (2011).「藤本健のソーラーリポートー日本の最北端・稚内にメガソーラー発電所があった!」『家電Watch』(2019/05/14 JST 最終閲覧)

*6:新潟おてんとサン「都道府県別、過去30年の平均日照時間ランキング」『自作DIYソーラーと太陽光発電で売電・節約・エコ人生』(2019/05/14 JST 最終閲覧)(気象庁による、都道府県の県庁所在地の1984〜2013年の平均日照時間のデータを地図にプロットしたもの。)

*7:舞田敏彦 (2013). 「殺人率と自殺率の国際比較(改)」『データえっせい』(2019/05/14 JST 最終閲覧)

*8:内閣府自殺対策推進室 警察庁生活安全局生活安全企画課 (2016). 『平成 27 年中における自殺の状況

*9:都道府県格付研究所「人口100万人あたりの殺人の認知件数ランキング」(2019/05/14 JST 最終閲覧)

*10:都道府県各付研究所「人口1千人あたりの犯罪発生件数ランキング」(2019/05/14 JST 最終閲覧)より換算。

*11:出典未確認