蛭川研究室論考・資料集

研究、授業、あるいは学会や研究会での発表のための資料集です。2017年度以前の資料は蛭川研究室旧館にアップしてあり、またその後の資料も草稿の段階のものは覚書のほうにアップしています。それらも、加筆修正してこちらの論考・資料集に移動させていきま…

入眠時幻覚と睡眠麻痺

通常、入眠後はまずノンレム睡眠に入るが、入眠直後から始まるレム睡眠を、入眠時レム睡眠(SOREMP: sleep onset REM period)と呼ぶ。過眠症の一種であるナルコレプシーに特徴的な現象だが(→「過眠症」)健常者でもふつうに体験される。入眠時幻覚(入眠期…

睡眠と夢見の系統発生

レム睡眠の進化は、鳥類と哺乳類の系統で独立に起こった。 哺乳類におけるレム睡眠の進化[*1]。左からネコ(真獣類〜有胎盤類)、オポッサム(後獣類〜有袋類)、ハリモグラ(原獣類〜単孔類)。 哺乳類の系統の中では、ジュラ紀に原獣類が分岐したのちに、…

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睡眠と覚醒のリズム

睡眠時にはレム睡眠(Rapid Eye Movement sleep)とノンレム睡眠(Non-REM sleep)が周期的に繰り返される。「REM」とは「Rapid Eye Movement: 急速眼球運動」のことである。通常、入眠時はまずノンレム睡眠に入り、それから約90分ごとにレム睡眠とレム睡眠…

意識の諸状態

四つの意識状態 人間の意識は複数の状態をとりうる。そして複数の意識状態に対応した複数の現実(reality)が存在する。たとえば、古代インドの『マーンドゥキァ・ウパニシャッド』は、人間の意識状態を四種類に分類している[*1]。 1 覚醒状態 2 夢のない…

【資料】ジェイムズ『宗教的経験の諸相』

私たちが合理的意識と呼んでいる意識、つまり私たちの正常な、目ざめているときの意識というものは、意識の一特殊型にすぎないのであって、この意識のまわりをぐるっととりまき、きわめて薄い膜でそれと隔てられて、それとは全く違った潜在的ないろいろの形…

【資料】『荘子』(胡蝶之夢)

陸治『夢蝶』[*1] 昔者(むかし)、荘周、夢に胡蝶と為る。栩栩然(くくぜん)として胡蝶なり。 自ら喩しみて志(こころ)に適えるか、周なるを知らざるなり。 俄然として覚むれば、則ち蘧蘧然(きょきょぜん)として周なり。 知らず、周の夢に胡蝶と為るか…

中国の春秋戦国時代

春秋時代(紀元前500年ごろ) [*1] 春秋時代の諸侯は、周と同姓の諸侯と、周と異姓の諸侯とがある。周(西周)は初め豊邑・鎬京(後の長安、西安)に都を造った。紀元前771年に洛邑(後の洛陽)に遷都して形式上は存続した(東周)が、これをもって春秋時代…

科学と非科学の境界設定問題

写真:クイーンズランド・パフォーミング・アート・センター/オーストラリア・ブリスベン 「科学」という日本語 まず最初に触れておかなければならないのは「科学」という日本語が何を意味しているのか、ということである。日本語の「科学」は、欧語の「知…

ヨーガと瞑想

インド的世界観の底流に流れているのは、輪廻(saṃsāra)からの解脱(mokṣa)という発想であり、その基本は、西洋近代科学の唯物論(materialism)とは反対の、唯心論(spiritualism)である。mokṣaは英語ではliberationと訳されたりもするが、物質的な身体…

輪廻と解脱

輪廻の観念 地球上のほとんどすべての伝統社会が、死後の霊魂という観念を持つ。転生、つまり霊魂がふたたび肉体に宿って現世に戻ってくるという観念を持つ社会も世界各地に存在する。古代インド哲学とそこから派生した仏教思想を特徴づけるのが輪廻転生の観…

PKの実験研究

乱数発生器実験 PKにかんしては、ラインの時代のサイコロ投げに代わって、放射性元素の崩壊やダイオードのトンネル電流などの物理乱数発生器(REG: Random Event Generator)を使ったミクロPK(micro-PK)の実験が行われるようになった。ダイオードの壁を「…

ESPの実験研究

さて、超心理学が仮定する現象の分類は、いくらでも、もっと細かく進めることもできるが、ここで重要なのは、これらの分類は、あくまでもその存在を確かめるために行う実験のための、操作的(operational)な分類であって、初めからその実在が仮定されている…

【文献】草間彌生『すみれ強迫』

すベてがどうでもいいわけではない。投げ出しているのでもない。サチコは思う。この世の摂理がわかっているのだ。花と星と雲と風が教えてくれることだけで充分なのだ。狂っているんじゃないと私は理解しているの。脳病院にゆくのはいい。でも私の頭の中には…

【資料】西丸四方『狂気の価値』

躁鬱病プラス分裂病・ある天才画家 私は三十年来、ある女性の画家を知っている。彼女が田舎の公民館で個展を催したときに、偶然出会い、その狂的な抽象画に圧倒されるほどの迫力を感じた。これは物真似でない本当の抽象画だと思って、その画家に会ってみた。…

【資料】ウェーバー「世界宗教の経済倫理」

われわれがこれから考察しようとするインドの宗教意識は、中国とはきわめて対照的に、かつてこの地上に出現した宗教倫理のうちで理論的にも実践的にももっとも徹底した現世否定の諸形態を生み出しただけではない。それに照応する「技術」もまたここで最高度…

心理学における「異常」と「超常」

超心理学(parapsychology)とは、超常現象(paranormal phenomena)を対象とする心理学の一分野である。しかし、「超」心理学や「超」常現象という訳語は、いささか意味不明である。あるいは、一種の「いかがわしさ」さえ感じさせる。以下、断りがないかぎ…

【資料】ヒポクラテス「婦人病」

女性が突然、言葉が話せなくなった場合は、両脚、両膝、両手が冷たくなっているのに 気付かれよう。このとき子宮に触ってみると、きちんとした位置にはない。患者は心臓がどきどきして歯ぎしりをし、多量に発汗する。その他にも神聖病におそわれた者に現われ…

【資料】ファイヤアーベント『方法への挑戦』

歴史が提供するゆたかな素材を見つめる人々、より低級な本能を喜ばせるために、すなわち明晰性、精確さ、「客観性」、「真理」という形式の中で知的な事柄における安全性を切望する気持を満たさんがために、その素材を貧しいものにするつもりのない人々にと…

精神疾患の分類

精神疾患の診断基準のアメリカ的〜グローバル・スタンダードである、DSM-5の章立ては、おおよそ、以下のようになっている。 1、神経発達障害 2、統合失調症(精神病性障害) 3、双極性障害 4、抑うつ障害 5、不安障害 6、強迫性障害 7、心的外傷後ス…

錯覚・幻覚・認知バイアス・妄想

幻覚(hallucination)とは、入力のない感覚情報を体験してしまうことであり、錯覚(illusion)とは、入力のあった感覚情報を歪めて認識してしまうことである。 錯覚と幻覚 火星の人面岩(Face on Mars)[*1] ほんらい意味のないパターンに人間の顔など、意…

【資料】レヴィ=ストロース『構造・神話・労働』

構造人類学への関心が最初にあらわれたのはオランダでありました。そうなったについては二つの理由があります。もっとも、この二つは表裏一体をなしておりまして、そのひとつと申しますが、第一の側面と申しますか、それは、オランダ人たちがすでに、一九二…

【資料】西丸四方『狂気の価値』

躁鬱病プラス分裂病・ある天才画家 私は三十年来、ある女性の画家を知っている。彼女が田舎の公民館で個展を催したときに、偶然出会い、その狂的な抽象画に圧倒されるほどの迫力を感じた。これは物真似でない本当の抽象画だと思って、その画家に会ってみた。…

【資料】田口ランディ『オラ!メヒコ』

長いこと、私はこの手で世界をつかまえたいと望んでいた。 世界を自分の手でむんずとつかんで、そしてこの胸にぎゅうっと抱きしめたい。そうしたらどんなに幸せだろうって、そう思っていた。そのことばかり考えて生きてきた。 だから、私は追いかけていた。 …

【資料】田口ランディ『アルカナシカ』

そこに存在するものは一〇〇パーセント現実だった。何一つとして非現実はなかった。つまり見えないものが見えたわけでなく、見えているものが見えているだけだったのだ。 階段を降りて家の裏へと向かう。そして、あの汚いトイレの前に立って、壊れかけた扉を…

精神展開薬(サイケデリックス)

精神展開薬(psychedelics: サイケデリックス)は、単純明快な分子構造でありながら、特異的体験、神秘体験、あるいは宗教体験といった強い変性意識状態を引き起こすことから、こうした体験が意外に単純なメカニズムで引き起こされることを示唆している。し…

神経伝達物質と向精神薬

神経系を構成する細胞を神経細胞(neuron: ニューロン)という。 神経細胞の模式図 樹状突起(dendrite)から伝わった興奮(excitation)が細胞膜の電位差として軸索(axon)を伝導(transmission)していく。神経終末(nerve ending)のシナプス(synapse)…

中米先住民文化と精神展開性植物

アメリカ大陸の先住民文化の中で、その社会が「国家(state)」といえる段階まで分化したのは、メソアメリカとアンデスの二つの文化領域である。 メキシコ先住民の言語の分布[*1] スペイン人が到来する直前、16世紀の文明[*2] 中米先住民文化の年表[*3] メソ…

【資料】水木しげる『幸福になるメキシコ』

水木しげるのメキシコ先住民儀礼体験[*1] 水木しげるの精神展開体験が、氏独特の、薄気味悪く、かつ、どこかユーモラスな筆致によって描かれているが、子宮への回帰という元型的な体験はまた、メキシコ先住民ウィチョールの、ウィリクタへの旅という世界観と…