著作からの抜粋

【資料】『荘子』(胡蝶之夢)

陸治『夢蝶』[*1] 昔者(むかし)、荘周、夢に胡蝶と為る。栩栩然(くくぜん)として胡蝶なり。 自ら喩しみて志(こころ)に適うか、周なることを知らざるなり。 俄然として覚むれば、則ち蘧蘧然(きょきょぜん)として周なり。 知らず、周の夢に胡蝶と為る…

【文献】草間彌生『すみれ強迫』

すベてがどうでもいいわけではない。投げ出しているのでもない。サチコは思う。この世の摂理がわかっているのだ。花と星と雲と風が教えてくれることだけで充分なのだ。狂っているんじゃないと私は理解しているの。脳病院にゆくのはいい。でも私の頭の中には…

【資料】西丸四方『狂気の価値』

躁鬱病プラス分裂病・ある天才画家 私は三十年来、ある女性の画家を知っている。彼女が田舎の公民館で個展を催したときに、偶然出会い、その狂的な抽象画に圧倒されるほどの迫力を感じた。これは物真似でない本当の抽象画だと思って、その画家に会ってみた。…

【資料】ヒポクラテス「婦人病」

女性が突然、言葉が話せなくなった場合は、両脚、両膝、両手が冷たくなっているのに 気付かれよう。このとき子宮に触ってみると、きちんとした位置にはない。患者は心臓がどきどきして歯ぎしりをし、多量に発汗する。その他にも神聖病におそわれた者に現われ…

【資料】ファイヤアーベント『方法への挑戦』

歴史が提供するゆたかな素材を見つめる人々、より低級な本能を喜ばせるために、すなわち明晰性、精確さ、「客観性」、「真理」という形式の中で知的な事柄における安全性を切望する気持を満たさんがために、その素材を貧しいものにするつもりのない人々にと…

【資料】レヴィ=ストロース『構造・神話・労働』

構造人類学への関心が最初にあらわれたのはオランダでありました。そうなったについては二つの理由があります。もっとも、この二つは表裏一体をなしておりまして、そのひとつと申しますが、第一の側面と申しますか、それは、オランダ人たちがすでに、一九二…

【資料】田口ランディ『オラ!メヒコ』

長いこと、私はこの手で世界をつかまえたいと望んでいた。 世界を自分の手でむんずとつかんで、そしてこの胸にぎゅうっと抱きしめたい。そうしたらどんなに幸せだろうって、そう思っていた。そのことばかり考えて生きてきた。 だから、私は追いかけていた。 …

【資料】田口ランディ『アルカナシカ』

そこに存在するものは一〇〇パーセント現実だった。何一つとして非現実はなかった。つまり見えないものが見えたわけでなく、見えているものが見えているだけだったのだ。 階段を降りて家の裏へと向かう。そして、あの汚いトイレの前に立って、壊れかけた扉を…

【資料】水木しげる『幸福になるメキシコ』

水木しげるのメキシコ先住民儀礼体験[*1] 水木しげるの精神展開体験が、氏独特の、薄気味悪く、かつ、どこかユーモラスな筆致によって描かれているが、子宮への回帰という元型的な体験はまた、メキシコ先住民ウィチョールの、ウィリクタへの旅という世界観と…

【資料】中島らも『アマニタ・パンセリナ』

僕はためしに、部屋を少し明るくしてまわりを見まわしてみた。 なるほど、これは少し様子がちがう。 青いもの、スミレ色のものが、それ自体発光しているように美しく見えるのだ。足もとを見れば、自分のはいている靴下の青が、輝いて目に飛び込んでくる。 「…

【資料】フロイトのテレパシー論

いとしいマルタ ぼくたちのあいだに働いているテレパシー的共感のせいで君は聖霊降臨節をぼくよりもたのしくは過ごさなかったようだね、もしそうだとしたらそれは非常に困ったことだ。(後略) マルタ・ベルナイス宛書簡(1885年5月26日) 恋文の中での戯れ…

【資料】レヴィ=ストロース『今日のトーテミスム』

ラドクリフ=ブラウンの証明は、トーテミスムの反対者も擁護者も、ともに閉じこめられていたジレンマを決定的に取り除く。かれらは生物種に自然の刺戟物か、あるいは勝手な口実というただ二つの役割しか与えていなかったのだから……。トーテミスムの動物たち…