化石人類の物質文化と精神文化

物質文化としての石器

先土器時代(≃石器時代)つまり土器が発明される以前の時代を代表する道具が石器である。


石器の変遷[*1]

ヒト属アウストラロピテクス属から分岐したころから石器が作られるようになったらしい。これは、ヒト属の大脳化が始まったときとも一致する(→「人類の進化と大脳化」)。

言語

化石の頭骨の内壁から脳の形態を推測することができる。言語中枢はブローカ野(Broca's area: 運動性言語中枢)とウェルニッケ野(Welnicke's area: 知覚性言語中枢)の二領域に分けられるが(→ヒトの脳の構造)、ホモ・ハビリスでブローカ野が、ホモ・エレクトスウェルニッケ野が発達しはじめたと推測されている[*2]


 

ホモ・ハビリスの頭骨(上)とホモ・エレクトスの頭骨(下)[*3]

ブローカ野の障害であるブローカ失語では、言葉に意味があるが発話がうまくできなくなり、ウェルニッケ野の障害であるウェルニッケ失語では、発話はうまくできるが言葉の意味が理解できなくなる。このことから、言葉を話す能力はホモ・ハビリスの段階から、言葉を理解する能力はホモ・エレクトスの段階から進化してきたと考えられる。

しかし、喉の構造から推測して、ネアンデルタール人までは言語を使用することができず、言語はホモ・サピエンス特有の能力だとする考えもある。ネアンデルタール人は歌のような「鳴き声」で喋っていたという説もある[*4]
なお、音声言語ではなく文字が使用されるようになったのは、たかだか数千年前のことであり、しかも文字は長い間、一部の文化の一部の階層に属する人たち(多くは男性)のものであった。ただし、言語を表記するための文字ではないが、抽象的な記号のようなものは、文字よりもはるかに昔から使われていた。

精神文化としての芸術と宗教

人間とは、理性を持つ動物であり、そこが他の動物とは異なる、ということは、しばしば指摘される。しかし、同時に、人間は理性と感性と霊性を併せ持つ。理性は科学を生み、感性は芸術を生み、霊性は宗教を生むが、科学だけでなく、芸術や宗教もまた人間に独特の活動である。

とくに科学はこの数百年で大いに発展し、技術を通じて物質文化も多いに発展した。

いっぽう、芸術や宗教はそれ自体で物質文化を発展させるものではない。では科学=技術の時代に芸術や宗教は必要なくなったのかというと、そうではない。真善美なという三種の独立した価値を立てることもあるが、芸術は人生を美しくし、宗教は人生に意味を与える。

科学は客観的事実を教えるが、生きる意味、死ぬ意味は科学では示すことはできない。ここで宗教というのは、仏教とかキリスト教といった、特定の体系化された宗教のことではなく、人類学では、もっと広い意味で使用する。人間は、ただ動物として生まれ、動物として子孫を残し、動物として死ぬだけではなく、なぜ生きているのか、なぜ死ぬとかという意味を求める。宗教的理由で出家し、子孫を残さずに死んでいく人もいるのだが、それはむしろ生物としての繁殖には反するもので、ときに精神文化は生物学的な生存に反することさえあるが、それでも人間は精神文化を発展させてきた。

芸術や宗教などの精神文化はホモ・サピエンス固有のものだと考えられてきたが、その起源はネアンデルタール人の時代まで遡れることが解明されつつある。


ヨーロッパにおける精神文化の年代[*5]

遺跡から発見される精神文化の痕跡は、いくつかの種類に大別される。その多くがホモ・サピエンスに固有のものだと考えられてきたが、ネアンデルタール人の文化にその萌芽がみられるという発見が相次いでいる。

埋葬は宗教的観念のあらわれとして解釈できるが、ネアンデルタール人の時代から多数の遺跡が見つかっている。(下記の「埋葬」を参照。)

貝殻や骨を使ったアクセサリーもネアンデルタール人の時代にまで遡ることが明らかになってきた[*6]

洞窟壁画もネアンデルタール人によって描き始められたらしいという説が有力になっている[*7]

音楽や踊りについての記録は残りにくいが、ホモ・サピエンスの遺跡からは、笛や太鼓などの楽器が見つかる。また、洞窟壁画の中には、人間が踊っているような絵も残されている。

後期旧石器時代 Homo sapiens
マドレーヌ文化 Magdalenian 14500〜20000BP
リュートレ文化 Solutrean 14500〜20000BP
グラヴェット文化 Gravettian 25000〜34000BP
オーリニャック文化 Aurignacian 34000〜40000BP
シャテルペロン文化 Châtelperronian 40000〜45000BP
中期旧石器時代 Homo neanderthalensis
ムスティエ文化 Mousterian 40000〜160000BP
前期旧石器時代 Homo heidelbergensis
アシュール文化 Acheulean 160000〜600000BP

ヨーロッパを中心とした石器文化の概略。シャペルテロン文化とムスティエ文化の時代が重複している。

ヨーロッパでは4〜5万年前に文化が飛躍的に発達したことから、ネアンデルタール人から現生人類への非連続的な進化、意識の「ビッグ・バン」が起こったと解釈されてきたが[*8]、この変化は、ホモ・サピエンスがヨーロッパに移住したことで見かけ上起こったものだと考えられるようになっている。じっさい、アフリカからは、古い時代のホモ・サピエンスが作った道具類が出土している。ヨーロッパに比べるとアフリカでは発掘調査が遅れているだけで、ホモ・サピエンスの文化遺跡は20万年前に遡れる可能性が高い[*9]

埋葬

死者を埋葬したらしい痕跡は、多数のネアンデルタール人の遺跡から見つかっている。

埋葬が行われていたらしいネアンデルタール人の遺跡[*10]

ネアンデルタール人の埋葬については、イラクシャニダール遺跡が代表的なもので[*11]、古いものは約8万年前まで遡れる[*12][*13]


シャニダール洞窟は、現在のクルド人自治地域に位置している


Shanidar Ⅳと名づけられた人骨。屈葬されたような姿勢をしている[*14]

同じ場所から草花の花粉が見つかったことから、遺体に花を添えたという解釈があるが、偶然に紛れ込んだだけだという反論もある[*15]


花粉が発見された植物[*16]

マオウEphedra altissima)には精神刺激薬であるエフェドリンが含まれているため、それがシャーマニズム的な儀礼に使われていた可能性も指摘されている。

シャーマニズムが現生人類のほとんどの文化で普遍的であることから、それはホモ・サピエンスの登場か、あるいはその以前に遡るかもしれない。

しかし、精神刺激薬は日常意識の覚醒水準を上げるだけで、変性意識状態を引き起こす精神展開薬(psychedelidcs)の使用は中南米の先住民文化に偏っているため、その歴史もたかだか1万年前までにしか遡ることはできない。

埋葬という行為が、たんに死んだ仲間を埋めるというだけのことだったのか、屈葬が胎児のようであることから、母胎への回帰を意味しているのか、あるいは死後の世界のような超自然的な観念にもとづいていたのかは、遺跡だけからは推測できない。

大型類人猿における「死」の概念

言語能力の議論の続きであるが、現在生存しているゴリラやチンパンジーも、喋ることはできないが、手話のような方法で言語的コミュニケーションをすることができるのではないかということが研究されている。

手話を身につけたココという名前のゴリラが飼い主であるパターソンに「Where do gorillas go when they die?(ゴリラは死んだらどこへ行くの?)」と聞かれたとき「Comfortable, hole, bye(気持ちいい、穴、さよなら)」と答えたという報告がある[*17]。これを埋葬ととらえることもできる。臨死体験におけるトンネル体験のようでもある。ただし、ココと手話で対話できたのはパターソンだけであって、解釈には恣意性があって客観的な追試ができないという問題点が指摘されている。

京都大学松沢哲郎らによって、チンパンジーの母親が死んだ子どもを背負い続けていたという報告がなされた[*18][*19][*20][*21]が、遺体を生きている子どもと同じように認識していたのか、特別なものとして扱っていたのかについては、議論の余地がある。

洞窟壁画


先史美術における人物表現の様式[*22]

洞窟壁画は広く新石器文化にみられるものであるが、同時に奇妙な文化である。灯りを消せば暗黒になる空間に延々と絵を描くことに実用的な意味を見出すことは難しい。日本の装飾古墳の場合、出入り口を閉じてしまえば内部を見ることができるのは死者だけとなる。


観光地にもなっている主要な洞窟壁画[*23][*24]
(1)ラスコー (2)アルタミラ (3)カカドゥ[*25] (4)ショーヴェ (5)タドラート (6)ラース・ガール (7)カピヴァラ (8)ビムベッカ (9)クエバ・デ・ラス・マノス (10)マグラ

とりわけよく研究されてきた洞窟壁画が約17000年前(マドレーヌ文化)に描かれたと推定されるラスコー洞窟Grotte de Lascaux)(→公式サイト)の壁画である。

洞窟自体は保存のために閉鎖されており、代わりにレプリカが作られ、公開されている[*26]


2016年に国立科学博物館で一般公開されたLascaux3[*27]

高度な技法によって写実的な動物が描かれている一方で、人物その他の描写はほとんど見られないのが特徴である。


「黒い牝牛とウマの列」


照明を当てると線刻が浮かび上がる(ミュージアムショップで売られていたクリアファイル)


「大きな黒い牝牛」の部分の色彩を復元した映像

「大きな黒い牝牛」の足下には「紋章」と呼ばれる3×3の正方形の模様が描かれている。ラスコーの壁画の中では珍しい抽象的な記号の表現であり、モンドリアンを思いおこさせる[*28]


「井戸の場面」

「井戸の場面」と名づけられた壁画には、バイソンを狩る男性の姿が描かれている。矢が投げられ、バイソンの腹部からは内臓が垂れ下がっている。動物の描写が写実的であるのに対し、この人物像は、なぜか単純な線画であり、それが何を表現しているのかについては、さまざまな解釈がなされてきた。


ジョルジュ・バタイユ『ラスコー、あるいは芸術の誕生』のスペイン語訳の表紙[*29]

バタイユはこの人物を、バイソンに襲われ、性器を勃起させながら死に向かう男性であると解釈している[*30]。もちろん、描かれた人物は、たんなる狩人かもしれない。男根は、その人物が男性であるという記号的な表現と解釈することもできる。現在の狩猟採集民では、狩猟と漁撈は男性にとっての象徴的な労働である。

ネアンデルタール人まで遡れる埋葬やアクセサリーも、ホモ・サピエンスによってさらに発展させられていく。


ラスコー3に付属しているクロマニョン人の復元模型
 

元になっているのは、イタリアとの国境にあるグリマルディ洞窟から発見された約25000年前の女性

シャニダールの人々が死者に花を手向けたのかどうかは推測の域を出ないが、新しい時代の埋葬人骨にはアクセサリーなどの副葬品が伴うようになる。また、赤という色彩に何らかの象徴的な意味が付与されていたことも知られている。

ヴィーナス像と地母神信仰


「ヴィレンドルフのヴィーナス(Venus von Willendorf)」(約23000年前)[*31]

動物や人物をかたどった彫刻も作られるようになるが、ヴィーナスと呼ばれる女性像もまた象徴性を帯びている。裸体であり、乳房や臀部が誇張されている一方で、顔や手足が省略されていることが多く、妊婦のようにみえる像もある。


縄文のビーナス」(縄文時代中期(4000〜5000年前)、長野県尖石遺跡[*32][*33]

ヴィーナス像は日本の縄文時代に特異的に発展し、形態も抽象度を増していく。(→「縄文文化の超自然観」)

「遊び」としての精神文化

石器の精巧化は、狩猟技術の向上を意味しているが、同じように、動物の壁画は狩りの成功への、裸婦像は安産や多産への祈願であったという機能主義的な解釈も可能ではある。いっぽうで、人間の精神文化は、食欲によって生命を維持し、性欲によって遺伝子を残すという生物学的な適応を超え出てしまっていることにその積極的な特異性があるということを看過することはできない。

『ラスコーの壁画』において、バタイユは、ネアンデルタール人こそが「ホモ・ファーベル(労働の人間)[*34]」であったのに対し「ホモ・サピエンス(知識の人間)」は、むしろ適切な呼称ではなく、「ホモ・ルーデンス(遊ぶ人、特に、驚異に満ちた芸術の遊びを遊ぶ人間)[*35]」と呼ぶほうが相応しい存在へと進化したのだ、と論じている[*36]ホモ・ルーデンスについては、たんに「遊ぶ人」ではなく、「驚異に満ちた芸術の遊びを遊ぶ人間」と書き加えている。ここでいう「遊び」は、たんに「労働」をしないこと、あるいは、無駄なこと、無意味なことをするという意味ではない。生物学的な生存とそのための労働の世界を超えた、より驚異的な意味の世界に自らを投入するのが「遊び」なのである[*37]

現生人類の脳

ネアンデルタール人 Homo neanderthalensis の脳容量は現生人類 Homo sapiens よりも大きかったが、頭骨の眼窩上隆起があるぶん、前頭部が後退しているようにみえる。それゆえ、現生人類は前頭前野が進化したことで、ネアンデルタール人を超える高度な知能を発達させたのだ、という説が唱えられてきた。


ネアンデルタール人(左)と現生人類(右)の頭骨[*38]

前頭前野の機能については、動物的な衝動を抑制し、計画的に物事を遂行していく意欲と能力という理性的な側面がよく研究されてきたが、同時に芸術的、宗教的な関心や能力とも関係しているらしい。

前頭前野の損傷によって起こる心理的な変化について「平坦さ、浅薄さ、無関心(中略)宗教感情の喪失、文学や音楽の鑑賞力の喪失、他人への感情の鈍感さ、自分の行動がもたらす金銭的結果への無関心」[*39]といった特徴が挙げられている。感情の平板化や無関心は、統合失調症陰性症状に似ているが、陽性症状では逆に幻覚や妄想などのイメージが豊かになる。

しかし近年の精密な研究では、頭骨の形とはあまり関係なく、二種の脳の形態はよく似ていることが明らかになってきている。


アウストラロピテクス属とホモ属の脳構造の進化[*40]


 

ネアンデルタール人(NT)、初期のホモ・サピエンス(EH)、現代のホモ・サピエンス(MH)の脳構造の比較。赤が退化した部分、青が進化した部分[*41]

両者の脳を比較すると、ネアンデルタール人では後頭葉が大きく、現生人類では意外なことに小脳が大きい。小脳は、従来、もっぱら運動の制御にかかわる部位だと考えられてきたが、ワーキングメモリなど、前頭前野に局在するとされてきた機能と関連する可能性が指摘されている。

いっぽう、脳では発達の過程で「シナプス刈り込み(synaptic pruning)」が行われる。ネアンデルタール人以前の人類よりも現生人類のほうが、他の部位よりも前頭葉連合野のほうが、より強い刈り込みが行われるということも明らかになってきている。


現生人類の大脳皮質におけるシナプス刈り込み[*42]


カニクイザルの三つの脳部位におけるシナプス刈り込み[*43]

統合失調症はこの刈り込みの行きすぎによって発病することが知られているが[*44]、初期に現れやすい幻覚や妄想などの陽性症状は、前頭葉による抑制が弛緩することで、内的なイメージが活発になりやすいと解釈することもできる。(→「精神疾患と創造性」)このことは現生人類の進化と並行した現象といえるかもしれない。



記述の自己評価 ★★★☆☆
(内容が多岐にわたり、記述の濃淡が揺らいでいる。複数の記事に分割する予定。最後のシナプス刈り込みについての議論は試論であって根拠が不十分である。それ以外の部分は、おおよそ既知の知見をまとめたものである。)
 
CE2019/04/21 JST 作成
CE2020/07/13 JST 最終更新
蛭川立

*1:東京大学総合博物館「最古の石器とハンドアックス―デザインの始まり」(2019/04/28 JST 最終閲覧)

*2:林勝彦・辻篤男・カウリング, T.(制作総括)(2011).『NHKスペシャル 驚異の小宇宙 人体II 脳と心 第1集 心が生まれた惑星~進化~ 』NHKエンタープライズ.に映像による解説あり。

Chapter2、5で脊索動物の脳の進化がCGで再現されている。Chapter8でホモ・ハビリスの言語野の進化に言及あり。

*3:(上)HOMO HABILIS. PATHWAYZ.(下)HOMO ERECTUS & ERGASTER. PATHWAYZ.(2019/04/28 JST 最終閲覧)

*4:ミズン, S. 熊谷淳子(訳)(2006).『歌うネアンデルタール―音楽と言語から見るヒトの進化―』早川書房. (Mithen, S. (2007). The Singing Neanderthals: The Origins of Music, Language, Mind, and Body. Harvard University Press.)

*5:Appenzeller, T. (2013). Old masters: The earliest known cave paintings fuel arguments about whether neanderthals were the mental equals of modern humans. Nature, 497, 302-304.

*6:高間大介・諏訪雄一(制作統括)(2018).『NHKスペシャル 人類誕生Ⅱ 最強ライバルとの出会い そして別れ』NHKエンタープライズ.に映像による解説がある。

Chapter2には、ネアンデルタール人が使用していた貝殻のアクセサリーが、Chapter3には、ネアンデルタール人が作ったと考えられている配石遺構が紹介されている。Chapter9ではホモ・サピエンスが発達させた宗教が小集団を大集団へとまとめあげる機能を持ったと結論づけているが、集団と集団とを結びつけるために発明されたものは婚姻であろう。宗教を広い意味で象徴の体系としてとらえれば婚姻もまた宗教だともいえる。

*7:最古の洞窟壁画とされていたスペインのEl Castilloの年代は40000BPであるが、その後同じスペインで発見されたCueva de los Avionesの壁画は65000年前以上と推定されており、ヨーロッパにホモ・サピエンスが到来した45000年前より大幅に古い。
Hoffmann, D. L., Standish, C. D., García-Diez, M., Pettitt, P. B., Milton, J. A., Zilhão, J., Alcolea-González, J. J., Cantalejo-Duarte, P., Collado, H., de Balbín, R., Lorblanchet, M., Ramos-Muñoz, J., Weniger, G.-Ch., Pike, A. W. G. (2018). U-Th dating of carbonate crusts reveals Neandertal origin of Iberian cave art. Science, 359, 912-915.

*8:クライン, R. G.・エドガー, B. 鈴木淑美(訳)(2004).『5万年前に人類に何が起きたか?―意識のビッグバン―』新書館. (Klein, R. G. & Edgar, B. (2002). The Dawn of Human Culture. John Wiley & Sons.)

*9:内村直之 (2005).『われら以外の人類―猿人からネアンデルタール人まで―』朝日新聞社. に概説あり。

*10:Noel, D. How the Neanderthals became the Basques. David Noel's AOI Homepage --The "Always Of Interest" website.(2019/05/14 JST 最終閲覧)

*11:Solecki, R. S. (1975). Shanidar IV, a neanderthal flower burial in northern Iraq. Science, 190, 880-881.

*12:Culotta, E. (2019). New remains discovered at site of famous Neanderthal ‘flower burial’. Science.(2019/05/01 JST 最終閲覧)

*13:林勝彦・辻篤男・カウリング, T.(制作総括)(2011).『NHKスペシャル 驚異の小宇宙 人体II 脳と心 第1集 心が生まれた惑星~進化~』NHKエンタープライズ.

Chapter4、9、10に映像による解説あり。Chapter11では、前頭葉の発達が現生人類への進化につながったという従来の説が紹介されている。

*14:Leroi-Gourhan, A. (1975). The flowers found with Shanidar IV, a neanderthal burial in Iraq. Science, 190, 562-564.

*15:出典未確認

*16:Leroi-Gourhan, A. (1975). The flowers found with Shanidar IV, a neanderthal burial in Iraq. Science, 190, 562-564.

*17:Patterson, F., Linden, E. (1981). The Education of Koko. Holt, Rinehart and Winston, 143. (パターソン, F.・リンデン, E. 都守淳夫(訳)(1995).『ココ、お話しよう』どうぶつ社.)

*18:Matsuzawa, T. (1997). The death of an infant chimpanzee at Bossou, Guinea. Pan Africa News, 4, 4-6.

*19:Biro, D., Humle, T., Koops, K., Sousa, C., Hayashi, M., Matsuzawa, T. (2010). Chimpanzee mothers at Bossou, Guinea carry the mummified remains of their dead infants. Current Biology, 20, 351-352.

*20:京都大学 (2010).「野生チンパンジーとその子どもの死についての事例報告」(2019/05/09 JST 最終閲覧)

*21:林勝彦・辻篤男・カウリング, T.(制作総括)(2011).『NHKスペシャル 驚異の小宇宙 人体II 脳と心 第1集 心が生まれた惑星~進化~ 』NHKエンタープライズ.

Chapter9で松沢哲郎による解説つき映像あり。

*22:河野一隆 (2016-2017).「絵描き人ーホモ・ピクトールの遺伝子ー」国立科学博物館(編)『世界遺産 ラスコー展』毎日新聞社・TBSテレビ, 86-87.

*23:Massue, F. Cave Painting. Miss Francine's Website HRHS 2016-2017.(2019/04/28 JST 最終閲覧)

*24:10 Prehistoric Cave Paintings. touropia.(2019/04/28 JST 最終閲覧)

*25:カカドゥの岩壁画については「オーストラリア先住民美術」を参照のこと。

*26:アナログ式の「Lascaux2」とデジタル式の「Lascaux4」の二つのレプリカのほかに、2012年には解体して運搬できるレプリカ、「Lascaux3」も作られ、以降、世界各地の博物館を巡回している。以下の記述は、おもに2017年に東京の国立科学博物館で展示されたLascaux3にもとづいて書かれている。

*27:国立科学博物館特別展 (2016-2017).「世界遺産 ラスコー展

*28:モンドリアンは、色彩を見ると音声が聞こえるという共感覚の能力を持っていたという。

*29:Bataille, G. (Baquero, I. H. & Fernández, M. M. Trans.) (2013). Lascaux o El nacimiento del arte . Arena Libros S.L. (Bataille, G. (1955). Lascaux ou la naissance de l'art. Reliure inconnue.)

*30:バタイユ, G. 出口裕弘(訳)(1975).『ラスコーの壁画 (ジョルジュ・バタイユ著作集)』二見書房, 155-157. (Bataille, G. (1955). Lascaux ou la naissance de l'art. Reliure inconnue.)

*31:オーストリア自然史博物館(蛭川撮影)

*32:

*33:茅野市尖石縄文考古館(蛭川撮影)

*34:ベルグソン, H. 松浪信三郎・高橋允昭(訳)(2001).『創造的進化(ベルグソン全集4)』白水社. (Bergson, H. (1907). L'Évolution créatrice. Félix Alcan.)

*35:ホイジンガ, J. 高橋英夫(訳)(1973).『ホモ・ルーデンス中央公論新社. (Huizinga, J. (1938). Homo Ludens: Proeve eener bepaling van het spel-element der cultuur. Wolters-Noordhoff cop.)

*36:「いずれにしても人類学者たちのいうホモ・ファーベル(労働の人間)は、遊びが誘(いざな)っていったかもしれぬ道の方には踏みこまなかった。あとから来たホモ・サピエンス(知識の人間)だけがその道に踏みこんだ。その踏みこみかたは断乎としており、手練に輝き天分に充ちた一個の芸術が、おそらく最初の粗描からしてただちに生れ出たのである。こうした形でホモ・ファーベルの狭苦しい世界を開放した者に、私たちはホモ·サピエンスの名を与える。だがこの名称はあまり的を射たものとはいえない。原初期に形成された少量の知識はホモ·ファーベルの労働に結びついている。ホモ·サピエンスの寄与はまことに逆説的なものだ。つまりそれは芸術であって知識ではないのである。ホモ·サピエンスという名称は、知識こそが人間を動物から隔てるものだと、人びとが今日よりももっと一途に思いこんでいた時代の証言となるものである。馴鹿時代の人間を、特にラスコー人を問題とするのならば、私たちは知識ではなく、本質的に遊びの一形態たる美的活動を力説した方が、先行する時代の人間から彼らをより正確に分つことになるのではなかろうか。ホイジンガホモ・ルーデンス(遊ぶ人間、特に、驚異に充ちた芸術の遊びを遊ぶ人間)という美しい表現の方が、ラスコー人にはふさわしいし、唯一の適切な表現でさえあるだろう。この表現だけが、ネアンデルタール人というホモ·ファーベルに対応する像を、この上なく正確に刻むことができる。ホモ·ファーベルは発育不良症であった。どんなに軽やかに飛躍しようとしても、四足獣めいた体形の鈍重さを克服することができなかった。鈍重さという点で彼は類人猿の件間だったのだ。よく笑う、誘惑好きな遊び=の=人の、出来のいい様子(人間にはしばしば出来損いの醜怪な実例があり、それが対照的にきわだたせるわけだが)、決然とした至高者的な物腰は、人類学がついに適切な命名を見出せぬまま、ようやくホイジンガに至って満足すべき名を与えられた、ホモ ルーデンスに始まるのである。ホイジンガが指摘したとおり、ホモ·ルーデンスという名称こそ、作品によって人間世界に芸術の功徳と光輝をもたらす者にふさわしい呼び名であり、さらにいえば、人類全体がこの名称で確実に命名されたと見るべきなのだ。従属的活動性を示すファーベルと対立するもの、自己目的にしか意味の拠りどころを持たぬもの、つまり「遊び」を指示するための、これは唯一の名称ではないであろうか。今日なお人間が自尊心の根拠としている肉体的外貌を持つに至ったのは、いずれにしても人間が遊びを実行し、実行しつつその遊びというものに芸術作品の恒久性と驚異の相とを賦与しえたときのことであった。もちろん遊びは進化の原因とはならない。しかし、鈍重なネアンデルタール人が労働と一致し、繊細な人間が芸術の開花と一致することは疑いを容れないのだ。たしかに遊びが、すでにある程度幼虫状態の人類の鈍重さを減らしていなかったという証拠はない。しかし幼虫期の人類には、人間の意味を芸術の意味に結びつけ、その場かぎりのことにせよみじめな必要性から人間を解き放ち、人それぞれが生甲斐とする「豊饒」の奇蹟的な光にともかくも私たちを到達させてくれた、あの遊びという人間的世界を創出する力は持たなかったのである。」バタイユ, G. 前掲書, 85-87.

*37:ギアーツは、バリ島民の闘鶏について「ディーププレイ(深い遊び)」という論考を記している。
ギアーツ, C. 吉田禎吾・中牧弘允・柳川啓一・板橋 作美(訳)(1987).『文化の解釈学Ⅱ』岩波書店, 389-461. (Geertz, C. (1973). The Interpretation of Cultures: Selected Essays. Basic Books.)

*38:Eric Hufschmid. (2008). More on the Neanderthal appearance. Huge Questions. (2019/04/28 JST 最終閲覧)

*39:カンデル, E. R.・シュワルツ, J. H.・イェッセル, T. M.・他(編)金澤一郎・宮下保司 (監修)(2014).『カンデル神経科学』メディカルサイエンスインターナショナル, 399. (Kandel, E. R., Schwartz, J. H., Siegelbaum, S. A., Jessell, T. M., Hudspeth, A. J. (2012). Principles of Neural Science, Fifth Edition. McGraw-Hill Education / Medical.)

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*40:Holloway, R. L., Sherwood, C. C., Hof, P. R. & Rilling, J. K. (2009). Evolution of the Brain in Humans – Paleoneurology. In: Binder M.D., Hirokawa N., Windhorst U. (eds) Encyclopedia of Neuroscience. Springer, Berlin, Heidelberg.

*41:Kochiyama, T., Ogihara, N., Tanabe, H. C., Kondo, O., Amano, H., Hasegawa, K., Suzuki, H., Ponce de León, M. S., Zollokofer, C. P. E., Bastir, M., Stringer, C., Sadato, N. & Akazawa, T. (2018). Reconstructing the Neanderthal brain using computational anatomy. Scientific Report, 8, 6296.

*42:渡邉貴樹・上阪 直史・狩野方伸 (2016).「生後発達期の小脳におけるシナプス刈り込みのメカニズム」『生化学』88(5), 621-629.

*43:Elston, G. N., Oga, T., & Fujita, I. (2009). Spinogenesis and Pruning Scales across Functional Hierarchies. Journal of Neuroscience, 29, 3271-3275.

*44:気分障害でも単極性うつ病より双極性障害のほうが発病が早いことから、双極性障害はむしろ統合失調症と遺伝的な共通性を持つ症候群であり、また単極性うつ病とは異なり、芸術や学問における創造性の遺伝子との関連が指摘されている。